零式艦上戦闘機(三菱、中島飛行機)



 零式艦上戦闘機(零戦)は、大日本帝国海軍の主力戦闘機。 海軍の艦上戦闘機としては実質的な最終型式で、日中戦争の半ばから太平洋戦争の終わりまで各地で活躍したことで知られる。 太平洋戦争初期に連合国の戦闘機を駆逐したことから、主交戦国のアメリカ軍から「ゼロファイター」の名で恐れられた。 設計は三菱だが、三菱と中島飛行機で生産され、総生産数の半数以上が中島製であった。

 本機は優秀な航空機だったため、数々の改良型、派生型が存在する。機銃、爆装の改良から、 引き込み式主脚の代わりにフロートを付けた水上戦闘機型の「二式水上戦闘機」や複座練習機型の 「零式練習戦闘機」、胴体に20mm斜銃1挺を追加した夜間戦闘機型(通称「零夜戦」)などがある。

 1940年9月13日、零戦は中国戦線で初陣を飾り、味方機の損失無しで敵機27機全機撃墜という戦果を報じた。 但しこの戦果は日本側の記録であり、日中両軍が把握している参加兵力と損害は、それぞれ中華民国軍戦闘機34機(I-15×25、I-16×9) 中撃墜13機撃破11機、零戦隊13機中被弾3機、着陸時に大破全損1機(主脚故障のため)とされている。 その後も中国戦線での零戦の活躍は続き、初陣から一年後の1941年8月までの間、戦闘による損失は対空砲火による被撃墜2機のみで 空戦による被撃墜機は皆無という一方的な戦いを演じた。

 太平洋戦争の真珠湾攻撃は全くの奇襲であったため、アメリカ軍の戦闘機との空戦は少なく主に飛行場に対して 機銃を用いた地上銃撃で活躍した。開戦直後のフィリピン爆撃では長い航続距離を生かして台湾から出撃する陸攻隊を援護し、 短期間にフィリピンのアメリカ陸軍航空隊を壊滅させ、南太平洋においてもラバウルからガダルカナルやニューギニアを攻撃した。 緒戦における零戦の戦闘能力は高く、零戦が有利であったことは日米双方の記録からもある程度裏付けられているが、 戦力バランスが大きく崩れ、更に早期警戒網と対零戦戦術が確立されたガダルカナル戦中盤以降は徐々に劣勢に追い込まれていった。

 太平洋戦争中期の1942年6月、アメリカ軍はアリューシャン列島のダッチハーバーに近いアクタン島の沼地に不時着したほぼ無傷の零戦の鹵獲に成功した。 この機体の徹底的な研究により、零戦が優れた旋回性能と上昇性能、航続性能を持つ一方で、高速時の横転性能や急降下性能に問題が あることが明らかとなり、その弱点を衝く対抗策として優位高度からの一撃離脱戦法と「サッチ・ウィーブ」と呼ばれる編隊空戦法が アメリカ軍に普及することになった。太平洋戦争中盤以降、アメリカ軍は2,000馬力級エンジンを装備するF6FヘルキャットやF4Uコルセア等の 新型戦闘機を投入するようになっていった。しかし、逆に零戦は武装強化や防弾装備の追加などによって重量が増える一方で発動機出力が向上しなかった ため、最高速度や上昇力等の飛行性能を大幅に向上させることができなかった。さらに後継機(雷電や烈風など)の実用化の遅延から、 終戦まで海軍の主力戦闘機として戦わざるを得ず、最終的に10,000機以上の零戦が生産された。

 マリアナ沖海戦ではレーダーを利用して管制された多数の戦闘機と新兵器近接信管を大量配備した対空砲に阻まれ大きな戦果をあげるには 至らなかった。結果、アメリカ軍に占領されたマリアナ諸島等から日本本土に襲来する新型爆撃機B-29の迎撃も行ったが、零戦の高高度性能に 不足があったため撃墜は困難であった。大型爆弾用懸吊・投下装置を追加した末期型は代用艦爆として、また特別攻撃隊(神風特別攻撃) にも用いられ、レイテ沖海戦や硫黄島の戦いで空母の撃沈破するといった戦果をあげた。沖縄戦では、特別攻撃隊に対応して更に強化された アメリカ軍の警戒網を突破するために日本側も戦術を工夫して突入を成功させ、空母を含む艦船を撃破したものの、艦隊到達前に撃墜される機も多く、 アメリカ艦隊を撃退するまでには至らなかった。
仕様・諸元(零式艦上戦闘機二一型)
機体略号 A6M2b
全長 9.06m
全幅 12.0m
全高 3.5m
自重 1,680kg
発動機 栄一二型(離昇940馬力)
最高速度 533.4km/h(高度4,200m)
上昇力 6,000mまで7分28秒
航続距離 3,350km(増槽あり)/2,222km(正規)
武装 ・翼内20mm機銃2挺(携行弾数各60発)
・機首7.7mm機銃2挺(携行弾数各700発)
爆装 ・30kg又は60kg爆弾2発
仕様・諸元(零式艦上戦闘機五二甲型)
機体略号 A6M5a
全長 9.121m
全幅 11.0m
全高 3.5m
自重 1,894kg
発動機 栄三一甲型(離昇1,130馬力)
最高速度 559.3km/h(高度6,000m)
上昇力 6,000mまで7分1秒
航続距離 全力30分+2,560km(増槽あり)
武装 ・翼内20mm機銃2挺(携行弾数各125発)
・機首7.7mm機銃2挺(携行弾数各700発)
爆装 ・30kg又は60kg爆弾2発