X−31(ロックウェル社)



 X-31EFM(Enhanced Fighter Maneuverability)は戦闘飛行性能の実験のために米国とドイツ等の各国共同で開発を行い、ロックウェルが製造した実験用航空機である。 実験機のため武装の設定はなく、2機のみ試作されたとされている。

 カナード翼・デルタ翼により構成されたスマートな外観であるが、キャノピー部にはF/A-18の物を使用するなど、開発費削減の努力もなされている。 この機体の特筆すべき点は、エンジン後方におけるノズルの噴射角度を変えることで機体の向きを変える(推力偏向)ことである。これにより、失速状態からの急な 方向転換や、機首を上に向けた状態を維持しての水平飛行など従来の機体では不可能な運動性能を実現した。

 翼の形状面では高速安定方向を重視しているため、通常飛行での不安定さはX-29ほど神経質にならなくても良かった可能性もあるが、推力偏向特有の挙動の制御には高度な 制御が必要だったのか、4つの飛行制御コンピュータを持っていた。しかし、実際にはそのうちの3つが飛行制御を行い、残りの1つは3つの飛行制御コンピュータの制御に 矛盾が生じないように"制御コンピュータを制御する"という特性を持っていたようだ。

 飛行能力、安定性のバランスは保たれていたが、本領を発揮するとその高すぎる運動性能と独特な挙動から非常に高いGを発生し、パイロットの体の方が動きについて行けない 機体とも言われている。