SH−60(シコルスキー・エアクラフト社)



 SH-60 シーホーク(Seahawkとはトウゾクカモメの意)は、シコルスキー・エアクラフト社製、アメリカ海軍などで使用されている多目的艦載用ヘリコプターである。

 SH-60はLAMPSV(Light Airborne Multi-Purpose System) 、すなわちSH-2 シースプライト (LAMPST) の後継機として開発された。LAMPSVへの機種選定は1977年であり、原型機YSH-60Bは 1979年12月に初飛行した。シコルスキー社のH-60シリーズの海軍型であり、陸軍向けのUH-60 ブラックホークとは電子設備や兵装、機体構造など、相違点が多い。 狭い格納庫に収納するため、テールコーンは手動、メインローターは電動による折りたたみが可能で、後部ランディングギアの位置も変更されている。 また、悪天候の中で着艦するためのRASTシステムが装備されダブルタイヤとなっている。対潜機材は対水上レーダー、MAD(磁気探知装置)、ソナー、ソノブイなどを装備している。 Mk-50短魚雷、AGM-114ヘルファイア、AGM-119ペンギン対艦ミサイルなどの兵装を搭載し、対潜哨戒、対水上捜索に従事する。 LAMPSとは、艦載ヘリコプター多目的運用構想のことである。ミサイル巡洋艦、ミサイル駆逐艦、駆逐艦、フリゲートの艦載ヘリを有機的に運用することにより、その機動性、索敵能力を 母艦のために最大限に発揮することを目的としている。まず艦載ヘリの任務の第一義的なものは、対潜水艦戦である。艦艇の曳航式ソーナー(TASS)により、 第1音響収束帯(1CZ、約30海里)または第2音響収束帯(2CZ、約60海里)で探知された潜水艦らしい音響信号に対し、ヘリ甲板上にて15分待機中のLAMPS機がアラート発艦し、 目標に対しレーダー、赤外線探知機、ソノブイ、磁気探知機、ディッピングソナー(吊り下げ式ソナー)、目視をもって目標を識別し、最終的に撃滅することを目的としている。 さらに救難輸送、電子支援戦、空中早期警戒が追加任務として付与されている。

 艦載ヘリのパイロットは、暗夜に狭隘でしかも動揺する駆逐艦の飛行甲板に着艦することが要求される。また、対潜水艦戦では、レーダーおよび目視索敵によって敵潜水艦の潜望鏡の 使用を封殺し、完全な海面制圧を行う眼力が必要となる。これらの戦闘能力は、戦闘機パイロットを凌駕する優秀な戦闘飛行技能を持つ証明である。ゆえに艦載ヘリパイロットの地位は 非常に高く、軍内部では、SH-60のパイロットを「シーホークライダー」の敬称をもって畏怖していると言われる。 生存性にも配慮されており、油圧装置故障時の人力操舵が可能であるほか、燃料タンク下面及びドライブシャフトは12.7mm機関銃弾に耐えることができる。また、各動力伝達ギアには、 故障の原因となる金屑の焼尽機能があり、潤滑油を完全喪失後も15〜30分間飛行可能である。テールローターが破壊された場合、バーチカルフィンとキャンバ付きフェアリング、 スタビレーターの空力的影響により、一定速度での飛行が可能であるが、ホバリングはできなくなる。コンピューターシステムにも同様の配慮がなされており、最重要である 通信航法機能は、主電源が断絶されるまで使用可能であるほか、メインコンピューターシステムは、MIL-STD-1553多重データバスにより、レーダー系統、ソナー系統、火器管制系統と おのおの分離しており、メインコンピューターの機能が破壊された場合も、カジュアリティー(戦傷)処理機能により重要な一部の機能の確保がなされる。不時着陸時は クラッシュワージネス構造と座席による衝撃軽減機能が働くほか、着水時には緊急浮袋を展開し、機内燃料タンクが予備浮力として働くことにより、水没を防ぐ。
仕様・諸元(SH-60J)
全長 19.8 m
ローター直径 16.4 m
全高 5.4 m
最大離陸重量 9,700 kg
発動機 T700-IHI-401C × 2
最高速度 275 km/h
航続距離 約584 km