F−4 ファントムU(マクダネル社)
F-4はマクドネル社が開発した艦上戦闘機である。初飛行は1958年。当初の番号は海軍がF4H 、空軍がF-110 で、
後の番号改変でF-4となった。愛称はファントムU。Uとなったのは、太平洋戦争末期にマクダネル社がFH-1 ファントムを開発していることからである。
ちなみにこの頃、マクダネル社は開発した機体の愛称を亡霊系で統一していた(ブードゥー、デーモン等)。
アメリカ初の全天候型艦上戦闘機として開発され、大型の翼と出力の高いエンジンの装備で搭載量を高めたのが特徴で、当時の西側陣営では代表的な機体。 後にダグラス社と合併して、マクダネル・ダグラス社になってからも増産し続け、西側を中心に世界中で5000機以上が運用された。 1950年代〜1960年代には、将来的に航空機同士の戦闘はミサイルによるものが全てとなり、同時に戦闘機はミサイルを運ぶだけのものになるという見解があった。 F-4は、こうしたミサイル万能主義の思想にもとづいて設計されたため、機銃は不要として装備されず、かわりにミサイルの搭載量が重視された。 マクダネル社は前作のF3Hデーモン戦闘機をスケールアップさせ、双発エンジンにしたものを基本に開発することとした。この双発型はF3H-GおよびF3H-Hの2タイプがあり、 1954年頃までに検討が進められていた。1954年10月に、アメリカ海軍はこの双発の機体をYAH-1攻撃機として、2機試作発注行った。1955年5月26日には、改めてYF4H-1戦闘機 として試作が切り替えられている。試作初号機は1958年5月27日に初飛行を行った。YF4H-1はF8U-3との比較の結果、1958年末までにアメリカ海軍に採用されることとなった。 当初、F-4は艦載機として開発されたが、空海両軍での戦闘機の共用化によるコスト削減を目論むマクナマラ国防長官の方針もあって、空軍の規格に合致する仕様に改められた ものを採用した。これは、1962年に3軍統一の機体命名法が施行されるまではF-110と呼称された。後継のF-15やF-16の配備が進むにつれ、一線からは徐々に退いたとはいえ、 貴重なSEAD専用機材であるF-4Gは湾岸戦争に参戦したほか、一部州兵航空隊でも使用され続けた。しかし、老朽化と陳腐化は否めず、1990年代前半にすべての機体が現役から 退くことになった。 F-4は最大8発の空対空ミサイルを装備でき、当時としては際立って有力なアビオニクスとあいまって、AIM-7長距離ミサイルにより、レーダー捕捉段階で視界外から 敵機を撃ち落すことが可能なミサイル運搬機であった。しかし、F-4が経験した初の実戦であるベトナム戦争では、海軍がレーダーでの敵味方の判別ができず同士討ちが 起きたことから視認前のミサイル発射が禁止され、視界外戦闘の不許可やミサイル装着時の部品の破損などの人的ミス、ミサイルの信頼性の低さといったいくつかの 問題のためにそうしたF-4の特質が生かされることはなかった。 空対空格闘戦という計画時になかった問題に直面し、訓練不足と兵装の制限(ミサイルには最低射程がある)のために苦戦を強いられることになった。北ベトナム空軍の 運用するミグ戦闘機は旧型だが機動性にすぐれ、制約の少ない機関銃を搭載していただけでなく、地上管制のサポートと限定された戦術目標を達成しさえすればよいと言う 有利さに支えられ、F-4をはじめとする米軍の戦闘機部隊を苦しめたのである。また、撃墜数自体は勝っていたものの、乗員が2名なので戦死者の数は敵より多かった。 F-4が他の米軍戦闘機に対してすぐれていたのは翼面荷重の小ささである。本来空戦性能のためではなく離着艦性能のための大きな主翼であったが、副産物として まずまずの空戦性能を持ち、特に空軍機にはこれに比類する物はなかった。 アメリカ軍では各種の延命処置を行い使用していたが、無人標的機(QF-4Bなど)に改造されたものを除き、1991年の湾岸戦争を最後として、実戦配備から現在ではすべて 引退している。しかし2005年現在でも、日本をはじめ、イスラエル・トルコなど数カ国において現役で活躍中である。 |
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仕様・諸元(F-4E) |
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全長 | 19.2 m |
全幅 | 11.7 m |
全高 | 5.0 m |
空虚重量 | 13,757 kg |
発動機 | ジェネラル・エレクトリック J79-GE-17A 軸式コンプレッサー ターボジェットエンジン × 2 |
最高速度 | 2,370 km/h |
フェリー飛行時航続距離 | 2,600 km |
武装 | ・M61 バルカン 20mm ガトリング砲 × 1(639ラウンド) ・核兵器、自由落下爆弾、クラスター爆弾、テレビ誘導・レーザー誘導爆弾、対地ミサイル、対艦ミサイル、対滑走路兵器、ロケット・ポッド、ターゲッティング・ポッド、偵察ポッド(最大8,480 kg) ・AIM-7 スパロー × 4 ・AIM-9 サイドワインダー × 4 |