F−35(ロッキード・マーティン社)



 F-35は、アメリカ合衆国の航空機。 ロッキード・マーティンが中心となって開発した単発単座の多用途性を備えたステルス戦闘機である。  開発計画時の名称である統合打撃戦闘機(英: Joint Strike Fighter)の略称JSFで呼ばれる事も多い。 愛称はライトニングU。

 アメリカのF-16、A-10、F/A-18、AV-8B、およびイギリスのシーハリアー、ハリアー GR.7、カナダのCF-18などを含む、多種類な戦術航空機を代替する新型機の開発を目的とした「統合打撃戦闘機計画」に基づき、 ボーイング社のX-32とロッキード・マーティン社のX-35の2種の概念実証機が開発された。 当機は統合打撃戦闘機計画に基づいて開発された、第5世代ジェット戦闘機に分類されるステルス機となっている。  量産機のF-35は2006年に初飛行し、現在でも開発は継続中である。 アメリカ空軍への本機の納入は2011年から開始され、初期作戦能力(IOC)獲得予定は2017年後半以降となっている。 アメリカ海兵隊への配備は2018年以降からとされる。 

 JSFの名の通り、ほぼ同一の機体構造を用いながら、基本型の通常離着陸(CTOL)機であるF-35A、短距離離陸・垂直着陸(STOVL)機のF-35B、艦載機(CV)型のF-35Cという3つの派生型を製造する野心的なプロジェクトである。  戦闘機のマルチロール機化は、現代の戦闘機開発の主流となっているが、1960年代には空軍の戦闘爆撃機と海軍の艦隊防空戦闘機を兼務するF-111の開発において、機体が大型化し想定した任務の全てを果たせず失敗している。  対してF-35は、比較的小型の機体で多任務とステルス能力の付加、さらには基本設計が同一の機体でCTOLとVTOLを派生させるという前例の無い多任務能力を達成し、採用予定国も複数に上る。 アメリカ空軍・海軍・海兵隊、 イギリス空軍・海軍、航空自衛隊などが採用を決定しており、あわせて数千機が製造される見込みであるが、開発の遅延や当初予定より大幅なコスト高などの課題も抱える。2011年5月時点で開発総額は3,850億ドル(31兆円)に達している。

《F-35A》
F-35Aは、F-35シリーズの基本型でアメリカ空軍での使用が考慮されたCTOLタイプ(通常離着陸)。 2006年12月15日初飛行。  2011年5月9日にロッキード・マーティン社からアメリカ空軍へ本機の納入がされた事が発表された。

《F-35B》
F-35Bはアメリカ海兵隊のハリアーUの後継機として使用するために、旧ソ連のYak-141の技術を使用したSTOVLタイプ(短距離離陸・垂直着陸)2008年7月11日初飛行。  エンジンのノズルを折り曲げて下方に向けることができ、エンジンから伸びるシャフトはクラッチを介して前方のリフトファンを駆動する。 リフトファンの吸気ダクト扉は後方ヒンジによる一枚扉となっている。  キャノピーの形状はA/Cと違い、完全な水滴型になっていない。

アメリカ空軍はA-10の後継機にA型ではなくB型を充当することを検討していたが、結局A型に一本化された。 イギリス海軍、イギリス空軍もクイーン・エリザベス級STOVL空母の就役を前提に、シーハリアーやハリアー GR.5/7の 後継機としてB型の配備を計画していたが、2010年10月25日のストラテジック・ディフェンス・アンド・セキュリティー・レビューに伴い、これをC型に変更すると発表。 しかし2012年にはC型の開発の遅れや、空母に装備する カタパルトやアレスティング・ワイヤーの高価格などを理由に、再びB型に変更することを検討している。

《F-35C》
F-35Cは、アメリカ海軍での使用を主としたCVタイプ(艦載型)2010年6月8日初飛行。 F/A-18A-Dの後継機であり、艦載機に要求される低速時の安定性の強化のため、主翼と垂直尾翼を大型化している。また、ニミッツ級、ジェラルド・R・フォード級原子力空母での 運用のために、機体構造や降着装置の強化、前脚の2重車輪(ダブルタイヤ)化とカタパルト発進バーの装着、アレスティング・フックの強化、特に空母格納庫スペース節減のための主翼の折り畳み機構を追加している。  これらにより機体重量は増大している。