F−22(ロッキード・マーティン社)



F-22は、F-15の後継機としてロッキード・マーティン社が開発し、アメリカ合衆国空軍にて制式化された多用途戦術戦闘機(航空支配戦闘機とも呼ばれる)。 愛称はラプター(Raptor/猛禽類の意)。初飛行は1997年(YF-22の初飛行は1990年9月30日)。

 1981年に米国でATF(Advanced Tactical Fighter/先進戦術戦闘機)と呼ばれる計画が始まった。空軍の要求の元に、ロッキードのYF-22とノースロップのYF-23の競争試作と なった。それにあたって両社ともに試作機を2機ずつ作り、1機にはプラット・アンド・ホイットニー製のYF119エンジンを、もう1機にはGE(ゼネラル・エレクトリック)社製の YF120エンジンを搭載し試験を行うこととなった。 その結果1991年にP&W社製のYF119を搭載したYF-22の正式採用が決定した。YF-22が採用された理由としては、YF-23にくらべステルス性やスーパークルーズ性能では劣っていたが 機動性および整備の簡易さが優れていたためといわれる。

 F-22はその性能要求通り、高いステルス性とスーパークルーズ能力を併せ持っている。ステルス性の詳細については軍事機密であり不明だが、レーダー反射面積は0.003〜 0.005uといわれている。これは、缶詰のふたほどのレーダー反射しかないことを示している。スーパークルーズについては、アフターバーナーの使用なしで最大巡航速度マッハ 1.58となっている。実際にはマッハ1.7まで到達したという発表もある。 また、F-22のエンジンは上下方向に20度まで推力軸を傾けることができる推力偏向ノズルの採用によりF-15を上回る旋回性能を持ち、格闘戦性能も高い。ただし、ステルス性を 利用すると、敵に探知されない遠距離から攻撃を加えることができるため、そもそもドッグファイトが起こる可能性は低いと考えられている。推力偏向ノズルによる運動性の 向上に伴い、パイロットの体が強烈な加速Gに耐えられなくなり、パイロットの体を保護する耐Gスーツが機体と併せて開発された。パイロットがブラックアウト・レッドアウトを 起こしたり、平衡感覚が狂ったりした場合には、操縦桿を離すことで機体を自動的に水平状態に復帰させる機能もある。 電子機器も優れており、特にレーダーは、約250km先の目標を探知出来るアクティブ・フェーズド・アレイ・レーダー(AN/APG-77)を装備しており、多彩なモードとの組み合わせ により索敵能力・信頼性・低被捕捉性に秀でている。電子機器は、非常に高性能で、リスク分散のため複数搭載されている。飛行姿勢はコンピュータ制御されており安定している。 飛行操縦系統には、3重のフライ・バイ・ワイヤを使用しており、列線交換ユニットの採用により整備性は高い。 また、F-22 の大きな特徴としてネットワーク機能がある。飛行中の F-22 は互いにデータリンク(IFDL : In Flight Data Link)によって戦術情報をやりとりしながら、 連携して戦闘行動を取ることができ、索敵範囲を超える敵機及び友軍機の情報を司令部や早期警戒管制機から受信することもできる。さらにロックウェル・コリンズ社が開発中の 高速データリンク・TTNT(Tactical Targeting Networking Technology)を 2008 年から導入する計画である。

 2007年1月現在においてF-22には実戦経験はないが、「目視は出来ているのに(F-15の)レーダーに映らない」ことさえあるというステルス性により、「1機でF-15を5機同時に 相手にできる」と言われる。実際、訓練中の模擬戦闘では驚異的な逸話がすでにいくつも生まれており、例をあげれば、「F-15を相手として100戦以上行われた模擬戦闘で無敗」 「アグレッサー部隊のF-16が300ソーティもの模擬戦闘を行ってついに一度もミサイルの射程内に捉えられなかった」等だが、模擬戦闘のドッグファイトにおいてF/A-18にガンで 撃墜された事が1回ある。 なお、当初転換訓練などのための複座型としてF-22Bを生産する予定であったが、その後、地上シミュレーターで完全に代替出来ると判断されたため、生産されていない。

 当初F-22は空対空戦闘能力のみを備える予定だったが、後に空対地攻撃能力を付与されることが決定され、2002年9月に攻撃機という意味のA(Attacker)の文字を加えられ、 名称がF-22からF/A-22へ変更された。しかし、2005年12月に初度作戦能力を得る際に、名称を再度F-22Aへと変更している。その理由には諸説あるが、名称変更に伴う要求性能の 変更などは特に発表されていない。

 F-22はF-15の後継に恥じない高性能機であるが、開発の遅れもあり、製造コストが大きい。当初は750機生産と予定されていたが、冷戦の終結で導入の意義が薄れ、2006年現在で は183機のみ生産予定で、米空軍はF-15の全機代替はせず、当面F-22とともに第一線で運用する。

 ステルス性が重視されているため、機関砲発射口は普段は閉じられており、発射時のみ開く(発射まで多少のラグが生じる)。また、通常すべての兵装は機内3箇所の ウェポンベイ(兵器庫)に搭載される(内2箇所は短距離空対空ミサイル専用)。ただしステルス性を犠牲にすれば翼下に600ガロンの燃料タンクを4つとAIM-120C AMRAAM中距離 空対空ミサイルを8発装備することが可能である。胴体下のウェポンベイとあわせれば計14発のAIM-120C AMRAAM中距離空対空ミサイルを搭載できることになり、 これは例を見ない数である。
仕様・諸元
全長 18.92 m
全幅 13.56 m
全高 5.08 m
空虚重量 14,365 kg
発動機 P&W製 F119-PW-100 A/B付きターボファンエンジン, 156 kN (35,000 lb) (A/B時) × 2
最高速度 2,575 km/h
航続距離 1,200 km
武装 ・M61A2 20mm機関砲 × 1
・AIM-120C × 6 (AIM-120A/Bの場合は × 4)
・AIM-9L/M/X × 2
・GBU-32 JDAM × 2
・GBU-39 SDB × 8