F−106(コンベア社)



 F-106はF-102(デルタダガー)の性能向上版としてコンベア社が開発しアメリカ空軍ADC(防空軍団)で使用された戦闘機である。 愛称はデルタダート(Delta Dart)、シックス等。初飛行は1956年。俗にセンチュリーシリーズとよばれるもののひとつである。

 アメリカ本土をソ連の爆撃機の編隊から防衛するために開発されたF-102は期待されたほどの性能を持っていなかった。そのため空軍は能力向上型として F-102B の開発を 1955年11月に命じた。後にこの機体は設計が刷新されたため、F-106 の名前を与えられることとなった。 MA-1 AWCS(自動兵装管制装置)を搭載しアメリカ本土防空システムSAGE(半自動地上管制迎撃システム)と連動することで、離着陸時以外は完全自動で迎撃戦闘が可能なため、 究極の迎撃機として喧伝された。 ただしそのため、本機はかなり高価な戦闘機となってしまった。 またSAGEの高度なシステムは当時の電子技術レベルでは荷が重過ぎ、鳥の大群を敵爆撃機の編隊と認識して、 迎撃戦闘を指示する事すらあったという。 そのため本機の補完目的として、F-101の迎撃機型も同時に採用されている。

 F-106はF-102の性能向上版であるため、機銃は搭載せず、AIM-4E/F/G スーパーファルコン空対空ミサイル、AIR-2A ジニー空対空核弾頭ロケット弾を機内弾薬庫に搭載する。 1969年のシックスシューター計画において、AIR-2Aと置換する形でM61バルカン砲の搭載が可能となったが、ごく一部の機体のみが装備したにとどまる。 なお、派生型としてF-106Bがあり、タンデムシートの複座型となっている。

 部隊配備開始は1959年で、1988年まで運用された。その後、全規模空中標的としてQF-106に改造され、1998年まで運用されている。 F-106 はアメリカ合衆国本土、アラスカ、アイスランド、カナダに配備され、北極超えで飛来するソビエトの爆撃機に備えていた。また西ドイツ(当時)と韓国にも短期間配備 されていたことがある。 幸運にも F-106 が実戦で米本土を防衛することはなかったが、MiG-21 に特性が似ていたため、ベトナム戦争に派遣されていた F-4 の仮想敵機として訓練に参加した。 F-106 の加速力と低翼荷重による高空での高い運動性能は F-4 パイロットをてこずらせたといわれている。
仕様・諸元
全長 21.55 m
全幅 11.67 m
全高 6.18 m
空虚重量 11,077 kg
発動機 P&W J75-P-17 アフターバーナー付ターボジェット, 109 kN (24,500 lbf) × 1
最高速度 2,455 km/h
航続距離 2,963 km
武装 ・20 mm M61 バルカン砲 × 1
・AIM-4F スーパーファルコン × 2 セミアクティブ・レーダー誘導空対空ミサイル
・AIM-4G スーパーファルコン × 2 赤外線誘導空対空ミサイル
・AIR-2A ジニー 空対空核ロケット × 1