F−105(リパブリック社)



 F-105 サンダーチーフ(F-105 Thunderchief)はアメリカのリパブリック社が開発した軍用機である。単座単発(F/G型は複座)の戦闘爆撃機で、同社のF-84の後継機である。 その爆撃能力は軽爆撃機というジャンルを不要にし「FとBを付け間違えた」とさえ呼ばれた。しかし、決して戦闘機としての本質を失った訳ではなく、ベトナム戦争では主に 爆撃を行いながらも、北ベトナム機を 27.5機撃墜している。今でいうマルチロールファイターの先駆けであるとも言える。愛称は「サッド」(Thud)。

 初飛行は1955年10月22日で、1958年5月から最初の量産型、F-105Bが米空軍の部隊に配備された。1964年までに800機以上生産され、ベトナム戦争の最初の4年間において、 北ベトナムに対する爆撃攻撃の75%はF-105によるものだった。 北爆当初北ベトナム空軍のMiG-17に撃墜されるという事件が起こり、「やはり戦闘機失格」という評判を産み、マッハ1級戦闘機であるF-100に、マッハ2級機である本機が 護衛されるという屈辱的扱いを受けた。だが結局F-100のほうは一度もMiG撃墜の戦果を残せなかったのに対し、本機は果敢にMiG-17に挑んで撃墜記録を残し、戦闘機失格の 汚名を返上している。ただし対戦闘機戦闘を行う際は爆弾を途中投棄せざるを得ず、結果として北ベトナム空軍は爆撃阻止に成功した事になる。核攻撃能力に傾倒する一方で 制空戦闘機を持たず、本機のような戦闘爆撃機のみ重視したため、ベトナム戦争の様な戦闘での対応に苦しんだ事を考えると、アメリカ空軍の判断ミスは大きかったと言える。

 主力型として生産されたD型からは、航法、火器管制、爆撃管制の各装置を連動させた統合自動システムを搭載し、出撃から帰還まで自動的に作戦を遂行出来る様になった。 ただし、回避機動などを行えないため使用頻度は少なかった。何機かのF-105は、レーダー妨害装置を備えた "Wild Weasel"機として敵の地対空ミサイルを破壊する任務に 使われた。このベトナム戦争において、北爆の主力として使用されたD/F型総生産数751機の内、約400機を撃墜されている。 ベトナム戦争終結後は、州空軍等の後方任務に回され、1984年に米空軍からは退役した。また、1964年に米空軍のアクロバットチーム、サンダーバーズの使用機として採用された が、同年5月に事故を起こした事とその直後に発生した別の部隊での墜落事故の二つが理由の一時的な飛行停止処置により、早々に使用中止となってしまった。
仕様・諸元
全長 19.63 m
全幅 10.65 m
全高 5.99 m
空虚重量 12,474 kg
発動機 P&W J75-P-19W アフターバーナー付ターボジェット × 1
最高速度 2,208 km/h
航続距離 1,259 km
武装 ・20 mm M61バルカン砲 × 1(装弾数1028発)
・爆弾(5基のパイロンに14,000 lb (6,700 kg)の通常爆弾又は3発の核爆弾搭載可能)
・ミサイル(AIM-9 サイドワインダー 空対空ミサイル、AGM-12 ブルパップ 空対地ミサイル、AGM-45 シェライク 対レーダーミサイル、AGM-78 スタンダードARM 対レーダーミサイルなど)