A−10(フェアチャイルド社)



 A-10はベトナム戦争の教訓を元にアメリカ空軍が立案した新攻撃機A-X計画により、フェアチャイルドが開発した近接航空支援(CAS)に特化した攻撃機である。 愛称はサンダーボルトU(ThunderboltU)。初飛行は1972年。今までの飛行機とは違いかなり奇抜な格好をしており、付いた別名がウォートホッグ(イボイノシシ)である。

 A-10は現代の航空機では当たり前となっている高度な電子機器の搭載や全天候での飛行などとは無縁で、徹底的に合理性のみを求めた機体と言える。 本機は被弾覚悟で重防御陣地や地上軍と戦闘し、勝利するために開発された攻撃機である。開発は1967年から開始されている。ノースロップYA-9との競争試作のうえで 1973年に採用された。

 ベトナム戦争では、対空機関砲により撃墜された航空機が多かったことを踏まえ、コクピット周りには23mm砲弾にも耐えるチタン装甲(通称バスタブ)を持ち、燃料系・ 油圧系統など機体の17%に装甲を施しているなどの高い防御性を持つ。

 劣化ウラン弾を装填した30mmGAU-8 Avengerガトリング砲を始めとし7tを超えるペイロードなど高い対地攻撃性能を持ち合わせる。対空装備としてはサイドワインダーを 装備できるがあくまで自衛用である。湾岸戦争では30mmガトリング砲にて、イラク軍Mi-17ヘリコプターの撃墜も記録している。しかし基本的には、その低速から空対空戦闘には 不向きで、制空権確保が運用の前提条件であるといわれている。このため、常に制空権を確保可能な強力な空軍力を持つアメリカ空軍以外での採用実績はない。

 低速時の機動性を高めるため主翼は直線翼となっており最高速はジェット機としてはかなり低速となっている。エンジンは中バイパス比のターボファンエンジンを2基装備し 低燃費となっており、エンジンは尾翼の前方に装備する。また、エンジンの装備位置が高いためストライク(異物吸入)率が下がり、尾翼の上にエンジン排気が通るため赤外線 誘導地対空ミサイルに探知されにくい。コストパフォーマンスも重視されていて、発注価格はF-15Aの1/3程度となっている。

 1976年より部隊配備が開始された。1980年代に入ると、速度が遅いことと全天候性能の不足により、空軍の戦術航空構想に合わなくなり、本機の評価は高いものではなくなった。 そのため、配属飛行隊の多くがF-16に転換され、基本性能は変わらないものの前線航空統制機(A-FAC)としてOA-10Aに改修されるなど、一部のOA-10Aへの改修機以外は空軍州兵や 予備役などの所属になった。このように退役が進められていたが、1991年に発生した湾岸戦争においては、それまでの評価を覆すこととなる。イラク軍の対空能力が低いことと、 砂漠地帯であるために天候が良好であったことも手伝い、イラク軍車両数千両を撃破した。この戦果により本機は高い評価を受けたが、速度性能などの不満は残り、 その後も退役は続けられた。その後も1999年のコソボ紛争や2003年のイラク戦争にも投入されている。
仕様・諸元
全長 16.16 m
全幅 17.42 m
全高 4.42 m
空虚重量 9,760 kgf
発動機 GE製 TF34-GE-100 × 2 ターボファン(A/Bなし)
最高速度 700 km/h
航続距離 4,100 km(フェリー)
武装 ・GAU-8/A 30mmガトリング砲 × 1 (1,174発)
・GBU-10/12、Mk82/83/84
・AGM-65、AGM-114、AIM-9