MiG−25(ミグ設計局)



 MiG-25(МиГ-25ミーグ・ドヴァーッツァチ・ピャーチ(NATOコードネーム:Foxbat:「大蝙蝠」))はソ連のミグ設計局が国土防空軍向けに開発したマッハ3級の航空機である。 迎撃戦闘機型と偵察機型、敵防空網制圧型および練習機型があった。初飛行は1964年。

 1950年代、アメリカ合衆国ではB-58、XB-70、SR-71などの超音速機が開発され、ソ連のミグ設計局は、こうした侵入機に対する迎撃戦闘機の開発の必要に迫られていた。 ミグではそれまで、I-3U、I-7U、I-75、そしてYe-150といった超音速迎撃戦闘機の開発実績があり、その十分な研究成果を持っていた。また、これらの試験機では「ウラガーン」迎撃 システムが試験され、超音速での迎撃システム構築の基礎データを集積していた。一連の試作機はYe-150とYe-152で完成の域に達し、両機は持続時間は限定的ながら、高度22 - 23 kmの 空域において最大3000 km/hでの飛行を実現した。また、B-58、XB-70、SR-71という標的に対し有効な攻撃を加えるため、長距離の捜索レーダーと長射程空対空ミサイルの開発も急がれた。 その結果完成されたのが、1961年に姿を現したYe-155(Е-155イェー・ピヂスャート・ピャーチ)であった。これはYe-150/152の純粋な発展型であったが、所期の能力を達成するため、 その機体構成は大きく変更されていた。まず、機体の構成素材が変更され、高速飛行に際しての高熱に対する耐久性が高められた。エンジンは大型のターボジェットエンジンR-15-300が 2基搭載され、垂直尾翼は外開きの2枚装備とされた。この垂直尾翼2枚装備はMiG-25が世界初である。大型の捜索レーダーを搭載するため、空気取入口は機首から機体両脇に移動され、 長大な機首には大型のレドームが装備された。ここには、地上から上空の目標まで誘導される自動迎撃装置が搭載された。

 Ye-155には迎撃戦闘機型のYe-155P(Е-155П)の他、高速偵察機型のYe-155R(Е-155Р)と巡航ミサイル母機型のYe-155N(Е-155Н)が開発された。但し、Ye-155Nの実用化は見送られた。 Ye-155Pは「航空機ミサイルによる空中目標迎撃システムS-155」の主要構成要素となることが見込まれた。そのため、機体にはシステムに連動する大型の機上捜索レーダー「スメールチA」、 誘導ミサイルのK-40(のちR-40として制式化)、地上目標航法装置の「ヴォーズドゥフ1」の機上航法指令送信装置「ラズーリ」が搭載された。

 試験は1960年代を通じて行われ、1962年から1963年にかけて4 機のYe-155が製作された。その内2 機は迎撃戦闘機型のYe-155P1とYe-155P2で、残る2機は偵察機型のYe-155R1とYe-155R2で あった。最初に組み立てられ飛行したのはYe-155R1で、1964年3月6日に初飛行に成功した。Ye-155P1はこれに遅れること約半年、1964年9月9日に初飛行した。その後も数機の試作機が 製作された。 1967年からは、Ye-155Pの最初の量産型機が製作された。1967年にはYe-155P7/8/9の3 機が、翌1968年にはYe-155P10/11の2 機が製作された。これらは、S-155システムの国家試験に 使用された。ソ連航空産業省の指令により、Ye-155Pは1968年にMiG-25P(МиГ-25П)、製品84(изд.84)として制式化された。部隊配備は1970年より開始された。 一方、偵察機型に関しては1968年に4 機目の試作機となるYe-155R4が製作され、これが最初の量産型機となった。Ye-155R2/3/4の3 機が国家試験に供され、試験は1969年10月に終了した。 量産は1968年から開始されており、航空産業省の指令によりMiG-25R(МиГ-25Р)として制式化された。 MiG-25の生産は、ゴーリキー(現ニージュニー・ノーヴゴロト)の第21航空機工場で実施された。MiG-25Pは、それまでの迎撃戦闘機Su-9、Su-11を代替してソ連防空軍の主力機となっていった。 一方、MiG-25Rとその派生型偵察機などはソ連空軍での前線任務に入った。また、最高高度到達記録の36.7 kmなど、高度到達時間トライアルでは米国のSR-71やF-15ストリークイーグル、 F-4ファントムのトライアル仕様機と熾烈な争いとなりこれらの機種と共に多くの記録を保持している。
仕様・諸元
全長 19.75 m
全幅 14.02 m
全高 6.5 m
空虚重量 20,350 kg
発動機 ソユーズ・ツマンスキー設計局製 R-15BD-300 × 2
最高速度 M 3.2
航続距離 1,730 km
武装 ・空対空AA-6,7,8,11,12
・空対地AS-11,17等