Mi−24(ミル設計局)



 Mi-24(ミー・ドヴァーッツァチ・チトゥィーリェ)は、1976年より旧ソ連空軍の他、世界の30ヶ国以上で使用されている大型の戦闘ヘリコプターである。 1978年以来、ソ連国内で約2000機が製造され、600機が輸出された。ソ連のパイロット達の愛称は「ワニ」であった。 NATOコードネームは「ハインド」(Hind)。
 Mi-25は輸出向けのMi-24Dダウングレード型であり、Mi-35は同様にMi-24Vをダウングレードした機体のほか、Mi-35P等ダウングレード型ではない発展型もある。

 Mi-24は、汎用ヘリコプターであるMi-8から開発された。そのため、基本構造はMi-8やMi-17などと同じである。 前頭部に搭載された2基のターボシャフトエンジンが、直径17.3 m、5枚羽のメインローターと3枚羽のテイルローターを駆動させる。 Mi-24D以降の機体は、タンデム形状のコクピットと、その上部にある横に2つ並んだ空気取り入れ口(エア・インテーク)が特徴的である。 また中央部に兵員室があり、歩兵の輸送も可能であるが、これにより大型化と重量に拍車がかかり、持久性と機動性を削いでいる。 機体の中腹にある短翼には、兵器の搭載装置がそれぞれ3基ずつあり、物資を吊り下げることもできる。着陸ギアは、引き込み可能な3輪である。 任務としては、近接航空支援から対戦車戦、航空戦と幅広くこなすことができる。その重装甲とチタニウム製のローターは、12.7 mm弾の直撃にも 耐えることができる。またNBC(核、生物、化学)戦に備えて、コクピットは加圧されている。

 1969年のテストフライトで、機体を傾けた急な旋回中に揚力を失って大きく横揺れすることが判明したが、完全には解決していない。 また、敵陣営に近い低空を飛行することが多いことからの攻撃されやすさへの対策として、作戦時には2機1組もしくはグループで行動し、 多方向から同時的に攻撃するという戦術が用いられるようになった。もう一つの欠点として、激しい機動を行った際に、高荷重によりメイン ローターが機体の尾部を打つ可能性があった。また、最大限に積載した場合、垂直に上昇することができず、転移揚力を利用した短距離の 滑走をしながら離陸しなければならない。Mi-24は戦闘と輸送という二つの役割を負い、悪い折衷になってしまったことから、 後継機であるMi-28やKa-50は、より対地攻撃に特化したものとなった。

 設計は、アメリカ軍のAH-1ヒューイコブラなどを比較対象としながら、1968年に始められた。最初の量産型であるMi-24Aは、 1970年に評価版として納入されたが、旋回が遅い、照準器のトラブル、並列座席により視界が悪いなど多くの問題を抱えていた。 テイルローターは、Mi-24Aの後期型からは取り付け向きがMi-17同様逆にされた。また、3人乗りのコクピットはガラス張り部分が大きかったため 防御力に不安があった。機体前部の設計が大幅に見直されてこれらの問題が解決されたのがMi-24D、エンジンの変更など決定版となったのが Mi-24Vであった。Mi-24Pでは12.7 mm4銃身機銃の代わりに固定式の30 mm連装機関砲が取り付けられた。 1995年に導入された最新型のMi-24VMは、軽量のファイバー製メインローターとテイルローターにより、全体的なパフォーマンスが向上し、 夜間作戦用などのアヴィオニクスも一新された。耐用年数やメンテナンス性も向上しており、2015年までの運用が予定されている。
仕様・諸元(Mi-24A)
全長 21.50 m
メインローター直径 17.30 m
空虚重量 7,675 kg
発動機 クリーモフ製 TV-3-117 タービンエンジン ×2
最高速度 320 km/h
航続距離 1,000 km
武装 ・12.7 mm機銃 A-12.7 ×1 (NUB-1可動式銃塔に装備、弾数900発)
・9M17Pファラーンガ-M(対戦車ミサイル) ×4
・UB-32A-24(ロケット弾128発を内蔵:S-5M1、S-5MO、S-5KBP、S-5KO、S-5-O) ×4
・OFAB-100×8、OFAB-250×4、RBK-250×4、RBK-500×2、KMGU-2×2、ODAB-500×2、3B-500×2