那珂(川内型軽巡洋艦)



 那珂(なか)は、川内型軽巡洋艦の3番艦である。 艦名は栃木県、茨城県を流れる那珂川に因んで命名された

 太平洋戦争序盤は第四水雷戦隊旗艦として活動。 1942年(昭和17年)4月のクリスマス島攻略作戦で損傷。 復帰後は第十四戦隊旗艦として輸送・護衛任務に従事した。  1944年(昭和19年)2月17日、軽巡洋艦阿賀野救援のため出動したところトラック島空襲に遭遇、アメリカ軍機動部隊艦載機の攻撃を受けて沈没した。

 大正時代の日本海軍は、7000トン以上の巡洋艦を「一等巡洋艦」、7000トン未満の巡洋艦を「二等巡洋艦」と類別していた。  1921年(大正10年)3月19日、建造予定の二等巡洋艦4隻(川内型軽巡洋艦)に、それぞれ加古、那珂、川内、神通の艦名が与えられる。 6月9日、4隻(加古、那珂、川内、神通)は 二等巡洋艦として艦艇類別等級別表に登録された。

 1941年(昭和16年)11月26日、那珂は第四水雷戦隊(司令官:西村祥治少将)の旗艦となった。 当時の第四水雷戦隊には、第2駆逐隊(司令橘正雄大佐:村雨、五月雨、夕立、春雨)、 第4駆逐隊(司令有賀幸作大佐:嵐、萩風、野分、舞風)、第9駆逐隊(司令佐藤康夫大佐:朝雲、夏雲、峯雲、山雲)、第24駆逐隊(司令平井泰次大佐:海風、山風、江風、涼風)が所属していた。

 太平洋戦争緒戦では高橋伊望中将率いる第3艦隊の一員としてフィリピン南部への侵攻に参加し、陸軍第48師団を運ぶ輸送船を護衛した。 その際、米陸軍航空軍の攻撃により軽微な損傷を受けた。  また第9駆逐隊山雲は触雷して損傷、同駆逐隊は事実上3隻編制となってしまった。 その後、スラバヤ沖海戦、クリスマス島攻略作戦を転戦し、1943年(昭和18年)4月1日、軽巡洋艦2隻(那珂、五十鈴)で第十四戦隊が新編される。   

 1944年(昭和19年)1月10日、第十四戦隊司令官は伊藤賢三少将から清田孝彦少将に交代する。 松永市郎(当事、那珂通信長)によれば、那珂は内地帰投の予定だった。 2月16日、米潜水艦スケートの雷撃で内地へ向け回航中の 阿賀野型軽巡阿賀野がトラック泊地北方で航行不能となった。 その阿賀野も2月17日午前1時45分、ついに沈没していった。 那珂は阿賀野の救援の下令を受けてトラック島を出港したが、途中で阿賀野沈没の連絡を受けてトラックに 引き返した。 2月17日未明、アメリカ海軍の第58任務部隊がトラック島を空襲した。 トラックへ入泊寸前だった那珂は空襲警報を受けて反転、外洋に出ようとした。 だがすでにアメリカ軍機動部隊に捕捉されており、 午前7時に艦攻約20機、9時に艦爆十数機、正午に艦爆・艦攻約20機、午後2時に艦爆4機の反復攻撃を受けてしまう。 当時の天候は全曇でうねりが高く、アメリカ軍機は雲を利用して攻撃をかけてきたという。  空母バンカー・ヒル および軽空母カウペンス 艦載機部隊の波状攻撃を受けた。 魚雷1本と爆弾1発が那珂の艦中央部に命中、艦前部を喪失。 前部乗組員は総員退去となり、脱出者はカッターボートで那珂の後部へ移動した。  対空戦闘を目撃していた哨戒艇が『那珂は艦橋切断、今なお奮戦中』と打電するほどの対空戦闘を続けたが再び直撃弾を受けて浸水が進み、那珂は午後2時頃に沈没した。

[同型艦]
・川内
・神通
艦 歴
起工 1922年6月10日
進水 1925年3月24日
就役 1925年11月30日
喪失(沈没) 1944年2月17日
除籍 1944年3月31日
建造所 横浜船渠
仕様・諸元
  竣工時 1941年12月 1943年4月
排水量 基準排水量:5,195 t
常備:5,595 t
全長 162.46 m
全幅 14.2 m
喫水 4.8 m
機関 パーソンズ式オールギアードタービン4基4軸
(90,000shp)
最大速 35.3ノット
乗員 446名
装甲 ・水線 64mm
・甲板 29mm
兵装 ・50口径14cm単装砲 × 7門
・61cm連装魚雷発射管4基 × 8門
・40口径8cm単装高角砲 × 2門
・6.5mm単装機銃 × 2挺
・九三式機雷 × 56個
・50口径14cm単装砲 × 7門
・61cm4連装魚雷発射管2基 × 8門
(九三式酸素魚雷16本)
・九六式25mm連装機銃2基 × 4門
・保式13mm四連装機銃1基 × 4門
・7.7mm単装機銃 × 2挺
・呉式二号三型改一射出機 × 1基
・50口径14cm単装砲 × 6門
・61cm4連装魚雷発射管2基 × 8門
(九三式酸素魚雷16本)
・八九式12.7cm連装高角砲1基 × 2門
・九六式25mm三連装機銃2基 × 6門
・九六式25mm連装機銃2基 × 4門
・九三式13mm連装機銃1基 × 2門
・九四式爆雷投射機 × 1基
・爆雷投下軌条 × 2基
・呉式二号三型改一射出機 × 1基
艦載機 なし 水上機1機 水上機1機