まや(ミサイル護衛艦)
まや(DDG-179)は海上自衛隊の護衛艦である。 まや型護衛艦の1番艦。 艦名は兵庫県の摩耶山に因み、日露戦争期に活躍した摩耶型砲艦1番艦「摩耶」、高雄型重巡洋艦3番艦「摩耶」に続き、日本の艦艇としては3代目となる。
「まや」は中期防衛整備計画に基づく平成27年度計画8200トン型護衛艦1615号艦として、ジャパンマリンユナイテッド横浜事業所磯子工場で2017年4月17日に起工され、2018年7月30日に防衛大臣小野寺五典により命名され進水、艤装工事と海上公試を経た後、2020年3月19日に引渡式・自衛艦旗授与式が挙行され就役。 第1護衛隊群第1護衛隊に編入され、横須賀に配備された。 建造費は約1,680億円。海上自衛隊では7隻目となるイージス艦である。 海上自衛隊は、第1次防衛力整備計画期間中の「あまつかぜ」(35DDG)によって、ターター・システムを搭載したミサイル護衛艦の整備に着手した。 その後、第3次防衛力整備計画より建造を開始したたちかぜ型(46DDG)3隻でシステムのデジタル化と海軍戦術情報システム(NTDS)に準じた戦術情報処理装置の導入、 そして五三中業より建造を開始したはたかぜ型(56DDG)2隻ではCIC能力の強化とともにプラットフォームのガスタービン化も達成するなど、順次に性能強化を図っており、とくにはたかぜ型については在来型ミサイル護衛艦の頂点に立つものと評されていた。 またこれと並行して、1981年ごろからは新世代の防空武器システムであるイージスシステム(AWS)の導入が模索されており、これを搭載するイージス艦として、まず61・03中期防でこんごう型(63DDG)4隻が建造された。 また13中期防では、たちかぜ型の代艦として、搭載システムの更新や航空運用能力の強化を図ったあたご型(14DDG)2隻が建造された。 そして26中期防では、はたかぜ型(56/58DDG)の代艦としてイージス艦2隻の建造が認可され、イージス艦8隻体制(4個護衛隊群に2隻ずつ)が整うことになった。 これによって建造されたのがまや型である。 まや型は、あたご型(14DDG)の設計を基本として、電気推進の導入を図っている。 これに伴い、全長にして5メートル、基準排水量にして450トン大型化した。 ただし最大幅21メートル、深さ12メートル、吃水6.2メートルというその他の主要目は変更せず、凌波性や艦尾フラップの導入等造波抵抗を大きく変化させないような船体設計とすることで、あたご型と同様の運動性能を確保しているとみられている。 機関の構成としてはCOGLAG方式を採用した。 これは先行するあさひ型(25DD)と同様の方式だが、同型では電圧450ボルトの低電圧であったのに対し、本型では電圧6.6キロボルトという高電圧とされており技術的にはより進んだものとなった。 発電機としてはM7A-05ガスタービン主発電機とディーゼル主発電機を2基ずつ搭載し、電力は7.4メガワット、電動機2基を駆動する。 また直接機械駆動の際に使用する主機は、LM2500IECガスタービンエンジン2基とされている。 なお、従来のこんごう型・あたご型ではガスタービンエンジン4基によるCOGAG方式で、最高速力30ノット以上を確保した。 これに対し本型の最高速力は「約30ノット」とされており、30ノットを下回る可能性が指摘されている。 これは最大速力を使用する頻度およびその目的達成度具合いと、通常使用される速力域での運用の重要性のトレードオフによる検討や、艦隊の運用形態の変化に伴う最大速力への依存度の低下などを反映したものと考えられている。 イージス武器システム(AWS)としてはベースラインJ7(ベースライン9C)、イージスBMDシステムとしてはBMD5.1を装備し、これらを統合している。 AWSベースライン9Cは、対空戦(AAW)機能とミサイル防衛(BMD)機能を両立した、IAMD(integrated air and missile defense)機能、およびNIFC-CA FTSを備えている。 本型では、NIFC-CA FTSのためのSM-6 艦対空ミサイルは後日装備とされているが、共同交戦能力(CEC)には対応しており、海上自衛隊で初の搭載例となる。 中核となる多機能レーダーはAN/SPY-1D(V)である。 一方、対水上捜索用のレーダーとしては、こんごう型・あたご型に搭載されているOPS-28Eとは違い、建造時からAN/SPQ-9Bが搭載されることとされたが、はぐろは後日装備となっている。 対潜戦システム(ASWCS)は改装後のあたご型と同じくAN/SQQ-89A(V)15Jを搭載し、船体装備ソナーとAN/SQR-20 MFTA(Multi-Function Towed Array)曳航ソナーを組み合わせている。 なお本型では、AN/SQS-53Cソナーのバウ・ドームに収容される送受波器TR-343は日本電気により国産化されたTR-343Jが搭載されている。 これは対外有償軍事援助(FMS)が増加する中、国内防衛産業の技術基盤を維持するため、アメリカ海軍に仕様を確認の上で製作し同海軍の評価・検証を経て納入に至ったものである。 324mm3連装短魚雷発射管については、こんごう型・あたご型ではHOS-302であったのに対し、本型ではHOS-303に更新されて、Mk.46に加えて97式魚雷および12式魚雷の発射に対応した。 これは平時はRCSスクリーンで覆われており、必要に応じてスクリーンを開けて所定の方向に指向される。 スクリーンを開けるために手動では3分程度かかるが、高圧空気を使用した機力では30秒程度で開放できる。 対艦兵器としては、1番艦ではあたご型と同じく90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)を搭載する。 主砲は、あたご型と同じ62口径127mm単装砲(Mk.45 mod.4 5インチ砲)が搭載される。 近接防空火器(CIWS)としては、高性能20mm機関砲を搭載する。 電子戦装置としてはNOLQ-2Cを搭載している。 これはこんごう型やあたご型で搭載されていたNOLQ-2シリーズ機と異なり、ECM機能が削除されている。 [同型艦] DDG180 はぐろ |
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艦 歴 |
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発注 | 2015年 |
起工 | 2017年4月17日 |
進水 | 2018年7月30日 |
就役 | 2020年3月19日 |
退役 | - |
母港 | 横須賀 |
仕様・諸元 |
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排水量 | 基準排水量:8,200 t 満載排水量:10,250 t |
全長 | 170.0 m |
全幅 | 21.0 m |
喫水 | 6.2 m |
機関 | LM2500IEC型ガスタービン 2基, 電動機 × 2基(69,000ps) |
最大速 | 約30ノット |
航続距離 | |
乗員 | 約300 名 |
兵装 | ・62口径5インチ単装砲 × 1門 ・CIWS × 2基 ・90式/17式SSM 4連装発射筒 × 2基 ・Mk.41 VLS(64+32セル ・68式3連装短魚雷発射管 × 2基 |
艦載機 | ヘリコプター × 1機 |