いづも(ヘリコプター搭載型護衛艦)
いずも(DDH-183)は、海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦である。 いずも型護衛艦の1番艦。艦名は令制国の出雲国に由来し、旧海軍の出雲型装甲巡洋艦「出雲」に続き日本の艦艇としては2代目。
太平洋戦争期の中型正規空母である雲龍型航空母艦を若干ながら上回る規模と排水量を有し、2015年4月現在、海上自衛隊では最大の艦艇となっている。
「いずも」は、平成22年度装備調達計画に基づく平成22年度計画19,500トン型ヘリコプター搭載護衛艦として、ジャパン マリンユナイテッド横浜事業所磯子工場で2012年1月27日に起工し、2013年8月6日に 進水、2014年9月22日に公試開始、2015年3月25日に就役した。 建造費用は1,139億円。 2015年3月25日より、舞鶴基地へ転属した「ひゅうが」に変わり横須賀へ配属され、第1護衛隊群第1護衛隊に所属している。 本艦の艦名においては、旧海軍の戦艦に使用されていた「長門」の名前を継ぐ「ながと」を推す声もあったが、日本国内外で波紋を呼ぶ可能性があることから見送られた。 なお、旧海軍の艦船では 装甲巡洋艦「出雲」があり、「いずも」の艦内には装甲巡洋艦「出雲」との比較図が飾られている。 命名後に「いずも」のロゴマークが公募され、「ヤマタノオロチと天叢雲剣」をモチーフにしたものが 選出された。 いずも型護衛艦は、先行して建造・配備された「ひゅうが型」をもとに大型化し、航空運用機能や多用途性を強化したものとなっている。 艦型は、ひゅうが型と同様、上甲板を全通甲板とした平甲板型とされているが、同型と比して、基準排水量にして約6,000t、全長にして51m大型化している。 これは第二次世界大戦当時、旧日本海軍が 運用した正規空母「飛龍」の基準排水量:17,300トン、公試排水量:20,165トン、全長:227.35mを上回り、大戦初中期のアメリカ海軍主力空母であったヨークタウン級航空母艦(基準排水量:19,800トン、 全長:247m)と同規模となる。 現代において同規模の艦にはイタリア海軍の軽空母「カヴール」、スペイン海軍の強襲揚陸艦兼軽空母「フアン・カルロス1世」がある。 ジェーン海軍年鑑など日本国外の メディアにおいてはヘリ空母に分類されている。 上部構造物は5層からなっており、右舷側に寄せたアイランド方式を採用している。 上甲板は、ほぼ全域にわたってヘリコプター甲板とされている。 キャットウォークは、「ひゅうが型」では左舷側のみに 設置されていたのに対し、本型では両舷に設けられた。 第2甲板はギャラリデッキとされ、司令部区画や居住区画、医療区画などが設けられている。 その下のハンガーは、16DDHより1層多い3層分の高さを 確保しており、第5甲板を底面としている。 第6甲板が応急甲板とされており、これ以下のレベルに食堂、科員居住区、機械室や発電機室などが設けられている。 主船体内には第8甲板まで設けられており、 また船底はダブル・ハルとされている。 なおフィンスタビライザーは、「ひゅうが型」では2組装備されていたのに対し、本型では船体の大型化もあり、1組とされている。 「ひゅうが型」は単艦での戦闘能力を持っていたが、「いずも型」は艦そのものの戦闘能力は低く抑えられており、ヘリコプターの運用に重点を置いた艦である。 多機能レーダーやソナーは簡略化されており、 武装も最低限の自衛火器を除いては搭載せず、対潜用の魚雷すらない。 これは前型の時点ですでに艦本体が洋上を機動して対潜その他戦闘に従事するには限界の大きさ (第二次世界大戦期の重巡洋艦クラス)であり、それ以上の大きさとなる本型は艦隊中核のプラットフォームに徹する運用が想定されているからである。 すなわち単艦では運用せず、護衛艦(例えばイージス艦) を伴った艦隊として運用することを前提としている。 航空運用機能は、ひゅうが型のものをもとに、大幅に増強したものとなっている。 上記の通り、上甲板は全通したヘリコプター甲板とされており、長さ245m×幅38mが確保された。 ひゅうが型の場合は 長さ195m×幅33mであったことから、面積にして1.5倍に拡張されており、これに伴ってヘリコプター発着スポットは1つ増えて5つとなっている。 艦首右舷側にも更に1個のスポットが設定されているが、 こちらは発着用ではなく駐機用とされている。飛行甲板についてはオスプレイが搭載可能な面積のエレベーターを備えている。 ヘリコプター甲板とハンガーを連絡するエレベータは「ひゅうが型」と同じく前後に計2基を有するが、ひゅうが型では前後ともにインボード式であったのに対し、本型では後部エレベータを艦橋後方右舷の デッキサイド式としている。 これはイタリア海軍の軽空母「カヴール」と同様の装備方式である。 前部の第1エレベータは長さ13メートル×幅20メートル、後部の第2エレベータは長さ15メートル×幅14メートルである。 デッキサイド式エレベータは、小型艦では波浪の影響が大きく、また、岸壁横付け時の障害となる恐れがある一方、エレベータの大きさ以上の大型機でも輸送可能というメリットがある。 [同型艦] 24DDH |
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艦 歴 |
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発注 | 2010年 |
起工 | 2012年1月27日 |
進水 | 2013年8月6日 |
就役 | 2015年3月25日 |
退役 | - |
母港 | 横須賀 |
仕様・諸元 |
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排水量 | 基準排水量:19,500 t |
全長 | 248.0 m |
全幅 | 38.0 m |
喫水 | 7.1 m |
機関 | LM2500IEC型ガスタービン 4基, 2軸推進(100,000ps) |
最大速 | 30ノット |
航続距離 | |
乗員 | 520 名 |
兵装 | ・CIWS × 2基 ・SeaRAM 近SAMシステム × 2基 |
艦載機 | SH-60K哨戒ヘリコプター、MCH-101掃海・輸送ヘリコプターなど計14機 |