はたかぜ(はたかぜ型ミサイル搭載護衛艦)



 はたかぜ型護衛艦(JMSDF DDG HATAKAZE class)は、たちかぜ型に続いて建造された、海上自衛隊の第三世代ミサイル搭載護衛艦である。

 本型は世代的には第三世代と言えるのだが、装備面はたちかぜ型とあまり変わりは無い。主機はDDGとしては初めてガスタービンエンジンを搭載し、巡航用と高速用を併用するCOGAG方式が 採用された。次級こんごう型が実質的には米国アーレイ・バーク級をタイプシップとする準同型艦であるのに対し、本型は基本設計が日本独自で行なわれたものである。

 本型では対潜ヘリコプターの運用を行うために後部甲板に発着甲板、艦の動揺を抑えるためにフィン・スタビライザーが設けられた。ただし格納庫が無いため固有の搭載機は持っていない。 船体の基本形はしらね型護衛艦を踏襲し、背負い式配置の前甲板砲熕兵装、凌波性向上のためのナックルライン、艦尾オープンデッキといったレイアウトが受け継がれている。一方、艦橋、 タービン吸気口といった艦上構造物ははつゆき型護衛艦のものがベースになっている。

 前方即応能力をねらって、対空ミサイル発射機は1番主砲相当の配置となった。これに伴い関連装備も前部に配置されている。また、この発射機を波浪から守るため艦首にブルワークが 設けられた。これは海上自衛隊の護衛艦では本型のみの装備である。結果、前甲板上の一般配置は前から、Mk.13スタンダードミサイル単装発射機、5インチ単装砲、アスロック発射機、という順に なった。

 主兵装のSAMはスタンダードSM-1MRであり、誘導方式はセミアクティブ・レーダーホーミング方式のものである。艦橋上部にイルミネーターが2基搭載されており、通常の運用では1基を誘導、 もう1基を目標の追尾に使用充てる。そのため同時に管制できるミサイルは2発までである。新造時からファランクスCIWSも艦の後部両舷に計2基搭載されており、近接防空能力を強化している。 戦術情報処理装置はOYQ-4-1で、当時の護衛艦としては最高レベルの物であった。ただ、NTU改修を受けていない本型はスタンダードSM2(慣性誘導、限定同時多目標処理)を運用できず、このため 現在では、同じターターシステム艦の中でもさらに防空能力は低くなっている。

 主砲MK42 5インチ単装砲(73式単装速射砲)はたかつき型護衛艦1、2番艦の近代化改装の際撤去されたものの流用である。前甲板、後甲板にダブルエンダーで計2基装備された。前甲板の 1番砲は甲板より一段高い2番砲相当の配置である。本型はMK42を装備する最後の自衛艦となった。

 艦体中央後部のスポンソン上にはハープーン発射筒がある。専用のハープーン発射筒の装備は、DDGとしては初めてである。2基あるハープーンSSM発射筒は本来四連装であるが、実際には上段 2門を外し、連装の状態で運用されていることが多い。

 後甲板の2番主砲より後ろはヘリコプター甲板となっている。ヘリ発着の際は砲身の接触を避けるため砲塔を真横に旋回させる。

 当初の計画では5隻建造される予定だったが、本型の誘導方式では搭載するイルミネーターの数によって対処できる目標数が制限されてしまい対処能力に限界があるため、イージスシステムを 導入、こんごう型に移行することとなり、2隻建造にとどまった。実際、1985年度予算では本型の3番艦とあさぎり型護衛艦2隻を要求したものの、大蔵査定の結果後者3隻の建造が認められると いう経緯があった。復活折衝に当たった防衛庁側も既に、イージス艦導入を視野に入れていた結果である。

 1番艦「はたかぜ」と2番艦「しまかぜ」の外観上の差異は殆ど無いが、後者は錨が直線的な形状の新型=アドミラルティー型になっている。 本型には一時、近代化改修の計画があったようだが実現せず、就役後は大きな変化なく活動を続けている。

[同型艦]
・DDG-172 しまかぜ
艦 歴(はたかぜ)
起工 1983年5月20日
進水 1984年11月9日
竣工 1986年3月27日
除籍 就役中
建造所 三菱重工業長崎造船所
仕様・諸元
排水量 基準排水量:4,600 t
満載排水量:5,900 t
全長 150 m
全幅 16.4 m
喫水 4.8 m
機関 ロールス・ロイス オリンパス TM3B 2基
ロールス・ロイス スペイ SM1A 2基
(70,000馬力)
最大速 30ノット
航続距離  
乗員 260 名
兵装 ・73式54口径5インチ単装砲 × 2門
・ハープーンSSM4連装発射機 × 2基
・68式324mm3連装短魚雷発射管 × 2基
・ファランクスCIWS × 2基
・74式アスロック8連装発射機 × 1基
・スタンダード単装発射機(Mk.13 Mod4) × 1基