扶桑(扶桑型戦艦)



 扶桑(ふそう)は、日本海軍の扶桑型戦艦の1番艦である。日本独自の設計による初の超弩級戦艦である。名前の由来は日本の古い異名の一つであり、同名を頂く艦としては二代目となる。 (初代は1879年竣工の装甲海防艦)

 世界列強が超弩級戦艦の建艦競争を繰り広げている中、日本海軍の「個艦優越主義」により、連装砲塔6基、12門の主砲を搭載する、当時の最重武装艦となった。しかし設計の練り込みが 足りなかったためか、罐室を第3・第4砲塔に挟まれる格好で配置した結果、後年の近代化改装時に罐の増設が困難となり、速力が24.7ノットと太平洋戦争に参加した日本戦艦中最も遅くなって しまった。また全長の5割に達する長大な被弾危険箇所(弾薬庫等)という防御上の弱点、第3・第4砲塔の不適切な主砲塔配置により一斉射撃時に爆風が艦全体を覆う等の多々の問題を抱えていた。 準同型艦の伊勢型戦艦ではこの点は改善されている。
 スリガオ海峡夜戦の際には、この防御上の欠陥が魚雷4本命中ののち弾薬庫に引火大爆発という最悪の形で露呈し、艦が二つに折れ、艦長以下生存者ゼロという悲劇を生んでしまった。 第一次改装後に機関出力がほぼ倍増され、速力も約25ノットに向上したため、伊勢、日向、長門、陸奥と戦隊を組み、高速な艦隊機動が可能となっている。この当時、24ノットで艦隊機動を 行える戦艦部隊をイタリア海軍以外の他国は保有していなかった事は特筆すべきであろう。

・1928年4月9日〜14日 戦艦長門、陸奥、軽巡洋艦天龍、給油艦鶴見、駆逐艦16隻、香港まで親善訪問
・1930年4月19日〜1933年5月12日 呉海軍工廠で第一次近代化改装(機関の重油専焼缶への換装・バルジの付加など)
・1934年 実働戦力低下のため一時的に戦列復帰(榛名と入れ替わりに改装に復帰)
・1934年9月16日〜1935年2月19日 呉海軍工廠で第二次近代化改装(第三主砲塔係留位置変更・カタパルト設置)
・1939年秋〜1941年春 太平洋戦争出師準備改装(艦尾延長・カタパルト移設・測距儀換装・応急注排水装置装備・舷外電路装備)
・1942年4月18日〜22日 東京空襲の米空母機動部隊追撃
・1942年5月29日〜6月17日 MI作戦支援、キスカ方面に出動、横須賀に帰港。
・1942年11月15日〜1943年1月15日 候補生実習艦として実戦から外される。
・1944年2月25日 第一艦隊解散により連合艦隊付属に編入(1月ごろリンガ泊地へ進出)。
・1944年5月中旬 長門とともに機動部隊・乙部隊に臨時編入。タウイタウイへ進出。
・1944年5月27日 米軍ビアク上陸を受け、渾作戦間接援護隊旗艦として出撃、6月15日ダバオへ入港。
・1944年7月15日 呉工廠に入渠し、機銃・電探の増備工事開始(8月14日出渠)。
・1944年9月10日 第二艦隊第二戦隊に編入(西村艦隊二番艦)。
・1944年10月4日 栗田艦隊にリンガ泊地で合流。8日ブルネイ進出。22日15:30出撃。
・1944年10月25日 スリガオ海峡夜戦にて、アメリカ艦隊の雷撃を受け魚雷4本が命中し大爆発沈没。艦長以下全員未帰還。
・1945年8月31日 除籍

[ 同型艦 ]
・山城

艦 歴(扶 桑)
起工
1912年3月11日
進水
1914年3月28日
竣工
1915年11月8日
喪失(沈没)
1942年10月25日
除籍
1945年8月31日
建造所
呉海軍工廠
仕様・諸元
  新造時(1915年) 艦尾延長時(1935年) レイテ沖海戦時(1944年)
排水量 基準排水量:29,326 t
常備:30,600 t
基準排水量:34,700 t
公試:39,154 t
 
 
全長 205.13 m 212.75 m
全幅 28.65 m 33.08 m
喫水 8.69 m 9.69 m  
機関 宮原式混焼缶両面8基
同片面16基
ブラウンカーチス式タービン
(40,000shp)
ロ号艦本式4基
同ハ号缶2基
艦本式タービン4基4軸
(75,000shp)(艦尾延長前)
最大速 22.5ノット(計画) 24.5ノット(計画)(艦尾延長前)  
航続距離 5,500海里(14ノット航行時) 11,800海里(16ノット航行時)
(艦尾延長前)
 
乗員 1,193名 1,396名  
兵装 ・四一式35.6cm連装砲 × 6
・四一式15.2cm単装砲 × 16
・53cm水中魚雷発射管 × 6
・四一式35.6cm連装砲 × 6
・四一式15.2cm単装砲 × 16
・12.7cm連装高角砲 × 4
・13mm4連装機銃 × 4
・25mm連装機銃 × 8
・四一式35.6cm連装砲 × 6
・四一式15.2cm単装砲 × 14
・12.7cm連装高角砲 × 4
・25mm3連装機銃 × 8
・25mm連装機銃 × 16
・25mm単装機銃 × 39
・13mm単装機銃 × 10
装甲 ・水線 305mm
・甲板 64mm
・主砲天蓋 152mm
・水線 305mm
・甲板 100mm
・主砲天蓋 152mm
・副砲廓152mm
艦載機 なし 3機(カタパルト1基)