比叡(金剛型巡洋戦艦)
比叡 (ひえい)は、日本海軍の戦艦(建造時は巡洋戦艦)で、金剛型戦艦の2番艦である。
1911年11月4日、横須賀海軍工廠で起工し、1912年11日21日進水、この時大正天皇行幸による初の命名が行われる。1914年8月4日竣工。 第一次大戦による対ドイツ参戦により竣工後1ヶ月で早速東シナ海方面へ出動している。 1929年10月15日より呉海軍工廠にて第一次改装に着手するが、ロンドン海軍軍縮条約成立により工事は一旦中止された。条約により戦艦1隻が練習戦艦へ改装されることになり、 金剛型で工事の一番遅れていた比叡が選ばれた。工事は4番主砲と舷側装甲の撤去及び機関の変更が行われ1932年12月31日に完了、翌1933年1月1日に練習戦艦に類別変更された。 練習戦艦となった際の兵装の撤去により艦内に余裕のあること、また艦隊所属でないためスケジュールの組みやすいことから天皇の御召艦としても利用された。 この年1933年5月に展望台を設けるなど御召艦用施設の設置工事を横須賀工廠で行っている。比叡はこの年と1936年、また戦艦に復帰した第二次改装直後の1940年の合計3回も観艦式での 御召艦を務めている。また1935年には宮崎、鹿児島御行幸の際の御召艦を、更に同年4月の満州皇帝の訪日の際にも御召艦となっている。 1936年12月末の条約切れをまって翌1937年4月1日より呉工廠で戦艦として復活する大改装が行われた。この改装は他の金剛型戦艦が一次、二次と2回で行われた改装を一度に行った 形となった。改装点を以下に示す。 ・第4砲塔、舷側装甲の復活。 ・水平装甲の追加(推定。他艦は第一次改装で実施済み) ・主砲装甲を強化、前盾250mm、天蓋150mmとなる。 ・その他装甲を追加する。 ・主砲仰角を43度まで増大し、最大射程は35,450mとなった。 ・副砲仰角も30度まで増大し、最大射程は19,500mとなった。 ・副砲は2門減り、14門とする。 ・主缶を重油専焼缶8基とする。 ・重油搭載量を増大、航続距離を延長した。 ・主機を艦本式タービンと交換、出力は136,000馬力となった。 ・抵抗を減少させるため艦尾を7.6m延長し速力を29.7ノットとした。 ・排水量が増大したため、バルジを装着した。 ・12.7cm高角砲の指揮装置を九四式高射装置とする。(他艦は九一式高射装置) ・25mm連装機銃10基を装備。 ・艦橋の近接防御用に13mm4連装機銃2基を装備(大和型と同じ装備) ・その他応急注排水装置、防毒装置などを装備した。 比叡は開戦時、霧島と共に第3戦隊第2小隊を編成、第一航空艦隊(南雲機動部隊)の空母部隊護衛として真珠湾攻撃、セイロン沖海戦、ミッドウェー海戦に参加、その後も 第二次ソロモン海戦、南太平洋海戦と空母部隊の護衛を務めた。 1942年11月12日深夜、第三次ソロモン海戦において日米ともに戦闘準備をしないまま米巡洋艦部隊と遭遇し、500〜1500mという艦隊決戦としては異常な距離で砲戦を行った。 この海戦では戦艦の防御力を生かし敵艦隊を壊滅に至らしめた。しかし、装甲が非常に薄いバルジに重巡の20cm砲弾が命中し舵機室の損傷による浸水のため操舵不能となる。 機関の出力調節でなんとか艦を安全水域まで退避させようと努力されたが、翌日B17の空襲を回避しようと高速運転した結果、修復中の破穴から浸水し被害が拡大し機関損傷 に陥ったため、艦を救う事を断念した。連合艦隊司令部は本艦によって敵の空襲を吸収できると判断し自沈をしないよう命じたが、艦長らは乗員を退避させた上で、随伴駆逐艦から 魚雷を打ち込み(打ち込んでいないと言う文献もあり)、自沈した。なお艦長は乗員らが強引に退避させた。本艦の沈没は、太平洋戦争中の日本海軍における戦艦喪失の第一号である。 [同型艦] ・金剛 ・榛名 ・霧島 |
艦 歴 |
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起工 | 1911年11月4日 |
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進水 | 1912年11日21日 |
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竣工 | 1914年8月4日 |
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1942年11月13日 第三次ソロモン海戦後に自沈 |
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1942年12月20日 |
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建造所 | 横須賀海軍工廠 |
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仕様・諸元 |
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排水量 | 常備排水量:27,500 t | 基準排水量:19,500 t | 基準排水量:32,165 t 公試:37,000 t |
全長 | 214.6 m | 214.6 m | 222 m |
全幅 | 28.04 m | 28.04 m | 31.02 |
喫水 | 8.38 m | 9.37 m | |
機関 | イ号艦本式混焼缶36基 パーソンズ式直結タービン2基4軸 (64,000shp) |
ロ号艦本式大型2基、同小型3基、 同混焼缶6基 パーソンズ式直結タービン2基4軸 (16,000shp) |
ロ号艦本式缶8基 艦本式タービン4基4軸 (13,6000shp) |
最大速 | 27.5ノット | 18ノット | 29.7ノット |
8,000海里(14ノット巡航時) | 9,800海里(18ノット航行時) | ||
乗員 | 1,221名 | 1,222名 | |
兵装 | ・毘式35.6cm連装砲 × 4基 ・毘式15.2cm単装砲 × 16門 ・53cm水中魚雷発射管 × 8本 ・8cm砲 × 4門 |
・毘式35.6cm連装砲 × 3基 ・毘式15.2cm単装砲 × 16門 ・12.7cm連装高角砲 × 4基 ・40mm連装機銃 × 2基 ・7.7mm機銃 × 3挺 |
・毘式35.6cm連装砲 × 4基 ・毘式15.2cm単装砲 × 14門 ・12.7cm連装高角砲 × 4基 ・25mm連装機銃 × 10基 ・13mm4連装機銃 × 2基 ・短8cm砲 × 8門 |
装甲 | ・水線 203mm ・甲板 19mm ・主砲天蓋 75mm ・主砲前盾250mm ・副砲廓 152mm |
・水線装甲撤去 | ・水線 203mm ・甲板 19mm ・主砲天蓋 150mm ・主砲前盾280mm ・副砲廓 152mm |
艦載機 | なし | なし | 3機(カタパルト1基) |