MIRAGE F1(フランス/ダッソー・ブレゲー社)



 ミラージュF1はフランスダッソー社製の戦闘機である。1970年代を代表する戦闘機の一つであり、多くの国で使用されている。

 単発エンジンの戦闘機であり、ダッソー社製にしては珍しく無尾翼デルタ翼ではなく、通常の尾翼付きの形状となっている。無尾翼形式を採用しなかった理由は、 STOL性能の向上のためであり、そのSTOL性能は前作ミラージュV(デルタ翼)よりも大幅に向上している。

 フランス海軍は空母を保有しているが、STOL性能に劣るミラージュV戦闘機は艦載機として使用するのは困難であり、アメリカよりF-8戦闘機の導入を余儀なく されてしまった。その反省からSTOL性能を重視した本機が開発された。そのため機体設計については、F-8の影響が極めて大きい。大テーパー比の後退翼 (あるいは後縁にも後退角のついたクリップトデルタ翼)の主翼を高翼配置、水平尾翼を中翼配置という基本構成は、F-8のそれをそっくり踏襲している。 武装は、30mm機関砲2門を固定武装とし、空対空ミサイル4発を搭載可能。この他に、通常爆弾または空対艦ミサイルを搭載できる。なお、配備当初は空対空ミサイルが 搭載できず、1976年までは武装は機銃のみであった。

 初飛行は1966年12月であり、1973年よりフランス空軍への配備が開始された。欧州各国への輸出は、あまり奮わなかったものの、その他の国への輸出は好調であり、 約500機が輸出された。なお、イラクへも数多く輸出されており、湾岸戦争において破壊されたものが多い。 イラン・イラク戦争でも、イラン空軍機との交戦で数機が撃墜されているが、中射程のシュペル530FミサイルによりF-4と互角の戦闘を行い、数機を撃墜している。

 南アフリカ空軍の機体は、アンゴラで1機がキューバのパイロットの操縦するMiG-23により撃墜されている。また、MiG-21と交戦し、少なくとも1機を撃墜している。 これとは別個にアンゴラは、MiG-23による数機の撃墜を主張しているが、ほとんどの場合は損傷したものの帰還しており、損失の多くは離着陸の失敗及び機体 トラブルであった。当時、短射程のR.550及びそのライセンス生産によるククリ空対空ミサイルしか装備しておらず、主力であったR.530系ミサイルが供給されて いないため、稼働率は低いとはいえ中射程のR-23/R-24を装備したMiG-23に対抗することは困難であった。 エクアドルの機体は、1995年にペルーのSu-22Aと交戦し少なくとも1機を撃墜している。
仕様・諸元
全長 15.0 m
全幅 8.4 m
全高 4.5 m
空虚重量 7,400 kg
発動機 SNECMA Atar 9K-50 (45,960kg/アフターバーナー時7,200kg) × 1
最高速度 M 2.1
航続距離 1,390 km(H-L-H、増槽3個使用)
武装 ・30mm機関砲 × 2
・シュペル530F空対空ミサイル、R550マジック空対空ミサイル