殲撃二十型(中国航空工業集団公司)



 J-20(殲撃二十型、Jianji-20)は、中国航空工業集団公司が、中国人民解放軍空軍のために試作中の第5世代双発ステルス戦闘機である。 NATOコードネームはファイヤーファング。

 J-20は、1990年代にコードネームJ-XXとして開発されたステルス機の1つで、第5世代とされる。 #2001および#2002と呼ばれる2つのプロトタイプが2010年末までに製作された。 成都市の成都飛機工業公司テスト飛行場敷地内で飛行を 伴わない地上走行が確認されたとされ、また、その容姿は2010年末に非公式の軍事関連のウェブサイトにJ-20のものと思われる画像が掲載されたことで明らかになった。 2011年1月11日に初飛行に成功したと公表された。 中国空軍首脳は2009年時点において、中国初のステルス戦闘機がまもなくテスト飛行の段階に入ると述べており、その8〜10年後に配備されるであろうとしていた。  2012年3月11日付英サンデー・タイムズ紙によると、中国のハッカーがBAEシステムズのコンピュータに侵入し、1年半に渡ってF-35に関する情報を盗んでいたと報じた。  2016年11月1日、広東省珠海で開催された中国国際航空宇宙博覧会で初公開。 2機によるデモンストレーション飛行も公開された。  2018年頃に実戦配備予定。

 J-20とされるプロトタイプの機体は、ロシアスホーイのPAK FA(T-50)や、アメリカロッキード・マーティンのF-22 ラプターより一回り大きく見え、エンジンはロシア提供によるサトゥールン 117S(AL-41F1S)ターボファンエンジン2基を 搭載している可能性を欧米メディアは伝えている。 しかし、写真を見る限り排気ノズルには推力偏向機構は付けられていない。  戦闘機年鑑2013〜2014によると、エンジンは試作初号機ではサトゥールン 117Sターボファンエンジンが使われていると見られる。 また、中国では殲撃20型用の新ターボファンエンジンWS-10Gを開発しており、試作2号機にはそのエンジンが 付けられているという。

 機首の断面はF-22に似た菱形に近い形状だが、エアインテークの形状はF-22と違い、F-35のようにDSI(ダイバーターレス・スーパーソニック・インレット)を採用している。 DSIはアメリカが1996年にF-16を改造してテストした技術であり、 後にF-35に採用されたものであるが、最初に量産された機体は中国とパキスタンが共同開発したFC-1である。 その後中国ではJ-10Bや改修されたJL-9と次々新型機に採用されており、近年の中国機の特徴の一つとなっている。  DSIはステルス性に優れているが、実際に採用したF-35やFC-1の最高速度がM1.7とM1.8だった事もあり、高速時のエンジン効率が下がると言われている。 しかし、F-16のテスト機で試験した時、旧式のダイバーター方式を採用した通常のF-16と 同じ最高速度M2.0を達成し、通常の機体と同じ飛行性能を発揮しており、実際にどれほど飛行性能や速度に影響があるかは不明である。

 J-20は、翼はカナードと後縁に緩い前進角を持つデルタ翼に近い主翼を組み合わせたクロースカップルドデルタ翼を採用している。 タイフーンやラファールなど、欧州機によく見られる形式であり、中国機でもJ-10が用いているが、 実用化した機体の多くは単垂直尾翼で、外側に傾斜した小さめの双垂直尾翼およびベントラルフィンとの組み合わせはミコヤンの試作した1.44に近い。

 また、ステルス性のために垂直尾翼およびベントラルフィンの傾斜は胴体側面の角度と等しくなっている。 カナードと垂直尾翼は全遊動式であり、垂直尾翼は90度近くまで作動することからYF-23の尾翼と同様にエアブレーキの機能を 持つと見られる。 搭載する電子機器についても全く不明だが、J-20用にタイプ1475(KLJ5)という、アクティブ電子走査アレイ(AESA)レーダーが開発されているととみられる。 このAESAレーダーは1,856個のT/Rモジュールで構成され、 Tu-204 テストベッド機においてテストを行っているとされる。 また、コックピットは完全なグラスコックピットになっているという。 キャノピーは一体式で、F-22と同様に後ろヒンジ式で開く。 操縦系統は、3軸安定式4重デジタル・ フライ・バイ・ワイヤと見られている。 高速タキシー試験の写真ではその制動にドラッグシュートを使用している。 ドラッグシュートは後部胴体中央にある。 また、主脚扉の前縁部には細かなギザギザがあり、これもステルス性を 重視している一つの証と言えよう。
仕様・諸元
全長 20.03 m
全幅 13.0 m
全高 4.70 m
空虚重量 17,000 kg
発動機 AL-31F、WS-15、WS-10G のいづれか2基搭載×1
最高速度 M 1.8
航続距離 2,970 km
武装